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長期優良住宅制度のあり方に関する検討会が最終とりまとめ 住宅性能表示制度と一体的運用へ

長期優良住宅制度のスタートから2019年6月で10年が経過しました。これに伴い、国土交通省では、「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」を設置、長期優良住宅の更なる普及促進に向けた取り組みの方向性について検討を進めてきました。今回は、同検討会の委員を務める(一財)ベターリビング住宅・建築評価センター認定・評価部長の齋藤卓三氏に、5月29日に行われた最終とりまとめの内容について伺いました。

木造一戸建住宅の認定は2割弱

―長期優良住宅の制度開始から10年が経過しました。認定状況はいかがでしょうか。

齋藤 これまでの累計認定件数は2018年度末時点で約102万戸に上ります。最近では、年間の住宅着工全体の約11%が認定を取得している状況となっています。

一戸建住宅については、新築のうち4分の1(2018年度実績25.1%)が認定を取得しています。これを構造別に見ると、鉄骨造は新築における認定割合が8割強(同82.7%)に上るものの、木造は2割弱(同19.1%)にとどまっています。また、一戸建注文住宅における長期優良住宅の供給戸数と認定割合を事業規模別に見ると、大規模事業者は約9割、年間1万戸未満の中規模事業者は約4割に上っているのに対し、小規模事業者は約1.5割、分譲事業者は約1割にとどまっています。長期優良住宅の普及促進に向けては、工務店などの小規模事業者や分譲事業者における認定戸数を増やしていくことが課題です。

―長期優良住宅制度における技術的審査の適合証交付戸数のうち、約7割が住宅性能評価書を併せて取得しているというデータが出ています。

齋藤 これまで新築戸数における長期優良住宅の認定戸数の割合はは25%程度、住宅性能表示制度の利用率は20%程度で推移してきました。これが、2018年度には住宅性能表示制度の利用率は26.1%に上り、長期優良住宅を逆転しました。これは、大手分譲事業者が住宅性能評価書の取得を標準化したことの影響が大きいのですが、一昨年に賃貸アパートにおいて大量の施工不良が発覚するなど、住宅性能評価の重要性が再認識されつつあるのが現状です。

住宅性能表示制度に基づく建設性能評価では、竣工時を含めて4回の現場検査が実施されます。住宅を供給する事業者と施主の双方において、住宅性能評価書の取得は安心材料となるものであり、今後、住宅性能評価書の取得は増えていくものと考えられます。

 

長期使用構造等の評価を一体化

―長期優良住宅制度と住宅性能表示制度の一体的運用が、検討会における検討課題の一つでしたが、最終とりまとめにおける方向性はいかがでしょうか。

齋藤 長期優良住宅の認定基準のうち、長期使用構造等に関する部分の多くは住宅性能表示制度の評価項目と重複しています(図1)。しかし、別の制度であるために、双方を取得する際、それぞれに対して申請書類の作成等が必要で、事務手続きの負担が大きくなっていました。更に、実態としても、長期優良住宅の技術的審査は登録住宅性能評価機関が行っていることから、これらの一体的運用について検討がなされました。

検討段階で、長期優良住宅の認定基準の全てについて住宅性能評価の枠組みでの評価を可能とする方法と、長期使用構造等に関する基準のみを住宅性能評価の枠組みで評価する方法の二つの案が出されました。前者は、より一体的な運用が可能となりますが、そもそも法律上、所管行政庁が認定を行う仕組みであることから、行政庁ごとに定める良好な景観形成や、地域における居住環境の維持・向上などの部分の審査に関しては、所管行政庁が直接審査を行った方が合理的という考え方もあります。

一方、後者は部分的な一体化となるものの、全国共通となる純粋な技術的部分のみの評価を行うことで、前者の課題は発生せず、事務手続きの合理化も図れるということで、こちらを軸に検討を深めるべきとの方向でとりまとめが行われました(図2)。

―一体的な運用が実現すれば、住宅性能評価書の取得がベースとなり、現状の技術的審査の位置付けはなくなるということでしょうか。

齋藤 検討会では、例えば住宅性能評価書の中で、「長期使用構造等に適合」などと表示するという意見が出されました。あるいは住宅性能表示制度の等級として長期優良住宅を入れ込むことも考えられます。いずれにしても、住宅の性能に関する内容は全て、住宅性能評価書を見れば分かるようになっていくと思います。

 

申請コストが低減、評価期間は短縮

―一体的な運用となった場合、事業者にとっては、具体的に何が変わってくるでしょうか。

齋藤 申請にかかるコストが下がります。これまで住宅性能評価書と併せて長期優良住宅の適合証を取得すると、交付費用として別途料金がかかっていましたが、これが必要なくなります。

また、手続きの合理化が図られ、評価に要する時間も短くなります。現在は、登録住宅性能評価機関に技術的審査を依頼し、適合証の交付を受け、これをもって所管行政庁へ認定申請を行うという2段階の審査体制となっています。更に、技術的審査の適合証が添付されて申請がなされた場合でも、適合証の内容について3割弱の所管行政庁では、改めて審査を実施しています。一体的運用がなされれば、技術的な部分の審査が登録住宅性能評価機関に一本化されるため、評価に要する時間が短縮されます。申請手続きについても、所管行政庁に認定申請を行う際、適合証とともに構造計算書等を添付する必要がありましたが、このような書類の合理化も図れるのではないかと期待しています。

検討会では、手続きの改善という観点から、所管行政庁への申請時期についても意見が出されました。現状の長期優良住宅制度では、着工前の申請が求められています。しかし、技術的審査に時間を要することで着工時期が延びてしまうため、着工後の認定申請ができるようにしてほしいという意見もありました。住宅性能表示制度では、建設性能評価の初回の現場検査が基礎配筋工事の完了時のため、それまでに設計性能評価が実施されていれば問題ありません。今後、一体的運用が実施された際には、住宅性能表示制度にならえば、着工前申請が必要でなくなる可能性も出てくると思います。そうなれば、事業者にとって時間的余裕が出てきます。

 

建設性能評価までの取得に高いメリット

―設計性能評価と建設性能評価の両方の取得を想定した一体的運用となるのでしょうか。

齋藤 長期優良住宅制度は、あくまで建築の計画を認定する制度ですから、一体的運用となった場合、設計性能評価のみの取得でも可能だと考えられます。ただし、長期優良住宅制度では、竣工後、建築士が計画通りに建築した旨を工事完了報告書として提出する必要があります。計画から変更が出ていた場合などは、現状、所管行政庁が技術的審査を行っていないため、その判断について登録住宅性能評価機関に意見を求めていたケースもあります。

これが、一体的運用となり、建設性能評価を取得していれば、登録住宅性能評価機関による4回の現場検査で住宅性能が確認されていますから、所管行政庁が判断に迷うこともなくなります。建設性能評価まで取得した方が、制度上の一体化がより図れる上、施主の安心という面でも間違いなくメリットが高いと言えます。

 

面積基準が変更の可能性も

―長期使用構造等を含め、認定基準の見直しについてはいかがでしょうか。

齋藤 今回の検討において、共同住宅での認定が進んでいない状況を踏まえ、共同住宅の認定基準の合理化について議論がなされました。ただし、一戸建住宅、特に木造に関しては、長期使用構造等の認定基準について大きな変更はないと考えています。

一方、住戸面積の基準として、延べ床面積について、共同住宅の場合は1戸当たり55㎡以上、一戸建住宅の場合は75㎡以上で、かつ少なくとも1の階の床面積が40㎡以上であることが定められています。これについては、共同住宅、一戸建住宅に関わらず、緩和を求める意見が多く出されました。特に都市部では、土地の制約から40㎡以上を確保することが困難であること、単身世帯が増加していることに加え、「住宅の広さ=豊かさ」という認識を改め、豊かさについてもう少し広く捉える必要があるとの意見が出されました。現在、住生活基本計画の見直しに向けて、審議会において検討が進められていることから、今回の最終とりまとめでは、審議会の結果を踏まえた上で、必要に応じて見直しを検討すべきとしています。

 

認定申請サポート事業者の利用促進を

―制度の普及の点で、小規模事業者の認定取得が進んでいないことが課題となっていました。

齋藤 工務店などの小規模事業者の多くは、長期優良住宅に取り組む際の障壁として、設計図書の作成を挙げています。住宅性能表示制度との一体的運用により、申請における事務手続きの合理化は進みますが、認定基準を満たすための設計図書の作成に関する手続きに変わりはありません。最終とりまとめでも、この障壁をクリアするためには、ナイスさんが保有するナイスサポートシステムのような認定申請サポートを利用し、取り組むことが必要だとしています。

来年4月1日には、改正建築物省エネ法に基づき、300㎡以下の小規模の住宅・非住宅においても、省エネ基準への適合の可否について建築士による説明が義務化されます。もちろん、長期優良住宅の認定基準としても、省エネ基準への適合が求められています。

こうした今後の動きを見据えて、認定申請サポート事業者を利用するなど、早めに自社の体制を整えていくことが大変重要になってくると思います。

―本日はありがとうございました。